法的リスクの高い新規事業を実行すると取締役を解任されるのかについて

 日本では多くの事業分野で規制がかかっているため、画期的な新規事業を立ち上げようとすると、どうしても何らかの法的リスクを伴うことになります。

 もちろん違法だとわかっていて事業を実行することは法に違反するものですからそのような事業を実行すれば、取締役としての法的責任を問われ、解任の正当理由にあたることになるでしょう。

 この点(東京高裁平成30年10月4日判決・ウエストロー2018WLJPCA10046008)は、結論としては解任の正当理由を認めているのですが、新規事業については次のように判示してリスクを伴う事業を実行することが必ずしも取締役の解任理由になるとは限らないとしています。

 「新規事業を他社に先駆けて実施することによってもたらされる利益を考慮しつつ,上記の信用毀損リスクを含めた新規事業に伴うリスクを低減させる方策等の可能性を検討し,最終的に本件事業を進めるか否かといった判断は,正に経営判断の問題であるといえる。なお,後述するように,本件事業自体は,上記信用毀損リスクを低減させる方策について十分な対応がされないまま,ごく一部が先行実施されただけで,本格的に稼働する前に終了しており,結果としては失敗に終わっているものの,このような経営判断に係わる失敗については,取締役の解任の正当理由とはならないというべきである」としました。

 問題は法的リスクがあると認識していたのなら、それをできる限り回避するための方策を検討するべきであるということです。

 そして、可能な限り法的リスクを回避する方策を取ることにより仮に失敗に終わったとしても、その事業を実行したことが取締役としての法的責任を問われるものではなく、それは経営判断として経営者としての責任となるということです。

 現代はプライバシー、営業秘密、信用毀損など企業の活動に法的リスクが伴うことが多くなっているため、新規事業を行うことに対して萎縮しすぎることのないようにしなければいけなくなっているようです。

 

水野健司特許法律事務所|技術・知的財産、外国企業との契約書を中心に解決 (patent-law.jp)