トヨタの不正問題について『トヨタこそ不正の「総本家」』(選択2024年7月号)、「本音激白インタビュー 豊田章男トヨタ自動車会長、認証不正の真相を語る」(文藝春秋2024年8月特大号)の記事がありました。
確かに豊田氏のインタビュー記事だけを読めば、米国向けにより重い台車を使い、より90度に近い角度で衝突テストを行ったのだからこれよりも基準の低い日本の認証制度のためのテストが必要ないのではないかという認証制度自体に疑問が残ります。国土交通省もトヨタ自動車を狙い撃ちするのではなく、マツダ、ヤマハ発動機、ホンダ、スズキの5社とともに認証不正があったと発表しており、トヨタ自動車に配慮しているようにも見えます。そして、豊田章男氏の記者会見を好意的に報道するメディアも多いのが現状ではないかと思います。
トヨタ自動車ほどの大企業の不正となれば、国家の製造業政策にも影響を与えるほどの問題であり、マスコミやメディアが批判的に取り上げるのはタブーというか踏み込んではいけない聖域といえるのかもしれません。
しかし、選択記事が指摘するようにレクサスの検査データ作成処理は、以前フォルクスワーゲンが行っていた不正と同じレベルのかなり悪質なものと考えられます。検査データを改ざんするといった悪質な不正と米国向けの水準の高い検査で代替していたという不正とは性質が異なるものであり、これらをまとめて品質に問題がなかったとまとめてしまうのは違和感があります。
インタビュー記事では不正の真相というよりは、豊田氏の経営姿勢が示されており、人は間違いを起こすことがあることを前提に考えていかなければならないという考え方がよく表れていました。
いずれにしても、事実を正確に捉えて不正をただしていくことが求められていると思います。
水野健司特許法律事務所
弁護士 水野健司