デジタルを使ったマーケティング手法として、データドリブンマーケティング、予測マーケティング、コンテクスチュアルターゲティング、拡張マーケティング、アジャイルマーケティングが紹介されています。
今となってはどれもよく知られた手法ですが、改めて整理し、自社でデジタルを導入する場合の選択肢として考えてみるとよいと思います。
データドリブンは、ビッグデータを入手できることで従前にない知見が得られる可能性を秘めていますが、戦略的な視点をもたずに何らかの相関が得られる期待を得ようとする使い方は結局機能しないことが多く、注意しなければならないとされています。
予測マーケティングは、入力データと出力データから単純なものであれば回帰計算、複雑なものであれば深層学習が使えるもので、現在生成AIなどの成果が著しい手法です。まずはこの機械学習の手法で応用できないかについては検討してみる価値があるでしょう。
コンテクスチュアルターゲティングが紹介しているのは、店内の顧客動向をビーコンで追ったり、視聴者の反応をカメラで分析する手法です。もっとも、この考え方は適切なタイミングで適切な提案を行うというコンセプトであり、その考え方自体はテクノロジーに関係なく非常に重要なものだと思います。
拡張マーケティングで紹介されているのは、顧客が認知から購買に至るいくつかの段階に応じてデジタルと人間による対応を変化させるというものです。つまり、ファネルが下の方に来るにしたがって顧客が購買に近づいてくるので、デジタルから人間が対応するように設計するというものです。ウェブのチャットやQ&Aで対応する部分と人間が対応する部分を分けて、より大切なコンタクトに人の資源を割くという考え方は、今後労働人口が減少していく中ではますます増えていくことになるのは間違いないでしょう。
アジャイルマーケティングはシステム開発で用いられるようになったアジャイル手法をマーケティングにも応用しようというものですが、アパレルなどライフサイクルの短い商品では、特に俊敏な対応が要求されることから大企業の意思決定プロセスでは、市場に商品を送り出すタイミングを逸してしまうことから考え出されたものです。逆に言えば、小規模のスタートアップや中小企業は事業自体が小さいことからこのアジャイル手法は本来的に備えていなければならず、これが小さいことの強みになるということです。
これらの手法は、どちらかというと大企業の選択肢とも考えられますが、その考え方自体は中小企業でも大いに参考になるものであり、改めてデジタルを導入する場合に検討したいところです。
水野健司特許法律事務所
弁護士 水野健司