デジタルとAIによる産業へのインパクトは過去の産業革命と比較しても広い範囲で重要な変化をもたらすことがわかってきています。ここでは従来のビジネスに対してゲームチェンジャーとなるものです。ここでは新しいAI時代のルールが5つにまとめられています。
ルール1:変化はもはや局所的ではない。システム全体に及ぶ。
AI時代をけん引するエンジンはデジタル技術の爆発的な広がり方であり、これはムーアの法則に代表されるように加速度的に高まっていくことが予想されている。そして多くの事実がこれはまだ始まりにすぎないと示唆されているという。このことにより新たな需要や機会をもたらすが、多くの職業がこれまでの利益を失うことになるだろうとしています。
ルール2:ケイパビリティの水平化と普遍化が進む。
AI時代では専門化された知識やスキルによる差別化要素が消滅し、共通の技術や知識に統一化されている。例えばアマゾンが金融やヘルスケアなどの他の分野に進出できるのは普遍的なネットワークとアルゴリズムにより専門性の壁を突破できることによる。つまりネットワーク効果と学習効果が機能すれば企業がもっていた専門的な知識やスキルは容易に克服できるということです。
ルール3:伝統的な産業の境界線がなくなる。組み換えが原則になる。
デジタル化により垂直に分断されていた産業は横断的につながり範囲を拡大する。ケイパビリティが普遍化されている分野で磨き上げたデータやアナリティクスを他の分野でも移行することができるようになったとされています。
組織が人間による制限を受けるのに対し、ネットワークの広がりはこのような制限を受けることはないということです。
ルール4:制約のあるオペレーションからフリクションレスなインパクトへ。
ネットワークを通じてフリクションレス(摩擦なし)で広がるためいったん情報が流れてしまうと取り返しのつかない事態ともなってしまう。例えば、クライストチャーチで銃乱射事件を撮影した動画は一気に拡散したためfacebookがいくら削除しても拡散を止めることができなかったとされています。
ルール5:集中と不平等が悪化する可能性が高い。
これはデジタルハブ企業に情報が集中し不平等がますます顕著になるだろうということです。
ここで指摘されている5つのルールを私たちのような士業は重く受け止めなければならないと感じます。
過去の産業革命では手工業業者が職を奪われ、やがて機械の管理というようにケイパビリティを移行させたといえますが、AI革命は主に情報の収集、分析、判断というホワイトカラーの職業全体に重大なインパクトを与える可能性があるのです。
これは弁護士のような専門知識で差別化してきた職業も例外ではなく今後はどのようにネットワークを通じてデータを収集しどのようなアルゴリズムを適用して分析し判断するかという機械学習モデルがどこまで業務に入り込んでくるがということを真剣に考えなければならないでしょう。
機械が導入されることで職業を失った手工業者と同じ立場にあるといえるのかもしれません。すでに翻訳業が自動翻訳に置き換わり需要がかなり低下していると聞きます。
いずれにしてもAI革命が自社の業務でどのように変化を及ぼすのか、むしろ自社で積極的にAI技術を取り入れながら近い将来に起きる産業構造の変革に対応する必要があるように思います。
水野健司特許法律事務所
弁護士 水野健司