「ジョブ理論」(クレイトン・M・クリステンセン他、ハーパーコリンズ・ジャパン)

 イノベーションで著明なHBS(ハーバード・ビジネス・スクール)教授のベストセラーです。スカイ分析と示唆に富んだ著作ですが、私が特に共感したのは相関と因果の説明です。

 私なりの具体例で話を進めますが、例えば、秋から冬になり気温が落ちるとコンビニでおでんが売れるようになります。一方で気温が落ちてくると、中高年者は血圧が上がってきて薬を増やしたりします。おでんの売れ行きと血圧の上昇との間に相関はありそうですが、これは因果関係ではない。おでんを食べるから血圧が上がるわけではないし、血圧が上がるからおでんを食べたくなるわけでもない。

 コンピュータの演算能力が各段に上がってくると、様々なデータが分析の対象となり、そこでは相関関係が隠された発見として重要視される可能性があります。著者は相関を見つけ出すことの危うさを指摘しています。

 見出さなければならないのは、相関ではなく因果であり、何がその行動を導いたのかということです。著者のアプローチは因果の流れを分析的に観察して解き明かそうというものであり、自然科学の法則を発見することに似ていてとても納得できるものでした。