いわゆる責任制限条項は有効か。

 製造・加工業やシステム開発業者が顧客と業務委託契約を結ぶとき、いわゆる責任制限条項を設けて損害額を代金相当額に限定することがあります。

 このような責任制限条項は意味があるのでしょうか。

 この点例えば東京地裁平成31年3月20日判決ウエストロー2019WLJPCA03206001(ただし同判決は控訴審で別の理由により変更されています。)では、「本件各責任制限条項は,経済産業省が提唱するモデル契約においても類似の規定が設けられているものであり」「その趣旨は,コンピュータ・システム開発に関連して生じる損害額が多額に上るおそれがあることに鑑み,段階的に締結された契約のいずれかが原因となってユーザに損害が生じた場合,ベンダが賠償すべき損害を当該損害発生の直接の原因となった個別契約の対価を基準として合意により限定し,損害賠償という観点からも契約の個別化を図るもの」とし、「その性質は,賠償上限額についての損害賠償の予定と解される。」として、原告の請求を代金相当額に限定しました。

 もっとも製造・加工業者・システム開発業者側に重過失があった場合にどう規定の上限が有効に適用となるかについては明らかになっていません。

 ただし業者側に重過失が認められるような場合であれば不法行為が成立する可能性が高く、その場合は契約条項は問題にならないと考えられます。

 いずれにしても責任限定条項は一定の効果があることが裁判例でも明らかになっており、業者側の契約条項としては検討しておきたい項目といえるでしょう。

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