「岐路に立つ民主主義 今だからこそ考えたいその価値とは。」(Wedge2024年4月号)

 2024年は世界60か国以上で選挙が行われる選挙イヤーであるとのことですが、ロシアを見ればわかるように選挙が必ずしも民主主義を担保しているとは限りません。選挙は、民主主義にとって必要条件ではあっても十分条件ではないということです。

 民主主義国といわれるインドでさえも、モディ政権に批判的な言論やイスラム主義は監視の対象となっており、逮捕者も出ていて政府による言論弾圧が顕著になっているとのことで、世界第2位となってこれから経済発展が期待される国の現実だということだそうです。

 いわゆるグローバルサウスとしてインドは、日本や欧米とは少し距離を置きながら権威主義的なロシアとの結びつきも強めており、アジアでは、中国はもちろん、香港、ミャンマー、タイなど自由主義的な民主主義は揺らいでいるといえるでしょう。

 筆者は、日本がG7の一員として法の支配や人間の尊厳という価値を基盤に外交を展開してきたことを評価しつつも、ミャンマーの軍事政権に対してどのような態度で接するのか、反政府勢力を支持するのか、判然とせず、法の支配や人間の尊厳という価値を徹底できていないことに疑問があるということでした。

 自由主義的な価値として法の支配や人間の尊厳を中心に置くのは正しい方向性を示しているとしても、自由な言論、自由な集会、国民の誰もが候補者になれるという基本的な自由が保障されていなければ、選挙は独裁者が正当性を説明するためのレトリックでしかないことを認識する必要があるように思います。

 

水野健司特許法律事務所|技術・知的財産、外国企業との契約書を中心に解決 (patent-law.jp)