違法な退職勧奨行為と精神的体調悪化の因果関係が認められた事例

 パワハラなど違法な言動が職場で行われた場合、うつ病適応障害等の精神疾患が発症したり悪化したりすることがありますが裁判所では行為と疾患の因果関係が証明できないことも多いといえます。

 東京地裁令和2年12月21日判決ウエストロー2020WLJPCA12218005は次のように述べて違法な退職勧奨と体調悪化の因果関係を認めました。

 「原告は,平成27年7月から平成30年6月までは,抑うつ状態,不安神経症不眠症等により,おおむね月1回の頻度で本件心療内科に通院し,抗うつ薬等の処方を受けていたところ,本件退職勧奨行為が始まった同月頃以後,担当する医師に対し,落ち込みの度合いが高まっている旨を訴えるようになり」「同年3月頃以後増加傾向にあった抗うつ薬等の処方量は,同年6月以後一層増加し」、「原告は,同年7月4日から被告会社への出勤を停止」「同月18日,同医師から,うつ病との診断を受け,同月以後,おおむね2週間に1回の頻度で本件心療内科に通院するようになる」「同年6月以後,原告の体調が悪化したことが認められるところ」、「原告の体調悪化の具体的な経緯に鑑みると,本件退職勧奨行為と原告の当該体調悪化との間には因果関係が認められる。」

 すなわち原告の投薬量増加、うつ病の診断、通院回数の増加といった症状の悪化が会社から受けた退職勧奨と時期的に対応していることから精神疾患の発症又は増悪が違法なハラスメント行為によるものであると判断されました。

 このように精神疾患との因果関係を証明するには診断書だけでなく診療経過も検討して時期的な対応関係を検討する必要があるでしょう。

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