会社で採用をしてみたがその仕事に向かないことが後からわかることというのはあり、このような場合その従業員には退職を勧奨せざるを得ないことになります。
ではこの退職勧奨がどのような場合に「行き過ぎ」となり違法になるのでしょうか。
この点東京地裁令和2年9月28日判決ウエストロー2020WLJPCA09288005では、退職勧奨自体を繰り返したとしても業務として行われており社会的に相当なものであれば直ちに違法になることはないとしています。
しかしこの事例では、退職にもっていくために1箇月間会議室で自習をさせるという嫌がらせをしていたこと、会社の対応に問題があるにもかかわらず、「謝って済む問題じゃねえだろ。嘘ついてんだぞ,おまえ。」、「おまえは嘘つきだって,言われてるよ。」などと繰り返し非難し、原告が「生産性のないやつ」でその「給料分,他の社員たちに与えた方がより効率的」などと侮辱的表現を用いて退職勧奨したことから、社会的に相当な範囲を超えているとして違法性を認めました。
会社として退職させたいという意図があったのでしょうがやはり従業員の人格権を無視したような退職勧奨が許されないことはいうまでもありません。