最近は一般企業でもコンプライアンス意識が高まってきており、少し厳しく注意したら社員からパワハラにあたるとの指摘を受ける機会が多くなってきました。
厳しい指導・注意と違法なパワハラとは境界がわかりにくく、指導が難しくなったという声も出てきます。
裁判所で違法と判断されるパワハラは、一般的には社会的に相当な範囲を超える言動ということになりますが、例えば、東京地裁 平成30年6月29日判決ウエストロー2018WLJPCA06298018では、問題のあった営業担当の社員であっても、座席を遠い場所にしたり無視したりする等、人間関係から切り離すことは教育の効果が期待できる措置ではないし、また給料泥棒や寄生虫に例えたりすることは人格権を侵害するものであっていずれも許されないとしています。また本人の意思に反して、営業のロールプレイテストに合格しなかったら、退職する旨の書面を書かせる行為も違法なパワハラであるとしています。
一方で、本人に改善の意欲に欠け、実際に改善されない場合に顧客に対する営業活動を制限したり、業務命令を繰り返すといったことは指導・注意の範囲にあるといえ、パワハラにあたらないとしています。
事案によって判断は変わるでしょうが、その行為に共育の効果があるのか、やむを得ない制限といえるのであれば、厳しい指導でもパワハラには当たらない可能性が出てくるように思います。
他方、個人の人格を攻撃したり、退職に向けた嫌がらせにあたると判断されるような場合は指導・注意の範囲になく、違法なパワハラであるとされる危険性が高まるといえるでしょう。
いずれにしても、社員と会社の信頼関係がなければ、誤解が生じやすくなることは間違いなく、日常のコミュニケーションが重要になるでしょう。