なぜ皆が同じ間違いをおかすのか「集団の思い込み」を打ち砕く技術(トッド・ローズ)

 成功の判断基準は何か、という問いに対し、多くの人は、自分の信念に従って生きられることだと考えているにも関わらず、自分以外の人は財産やステータスを成功の基準だと考えるであろうと思っていることが調査で分かった。

しかし、実際は財産やステータスが成功の基準だと考えているのは多数派ではなく、幻想にすぎない。

 これは一例ですが、このように大衆の総意を見誤って自己の真意を捻じ曲げてしまうということが、現実にはよく起こることに注意が必要です。

 例えば、自分はそうでもないのに他の大勢の人が受け入れないだろうという思い違いで、日本では男性が育児休暇を取らないということがおきているとのことです。

 大衆の総意が、自分の意思と異なるとの思い違いから黒人の解放運動にも時間がかかってしまったり、皆が従うべきでないと考えているような慣行がいつまでも残ってしまう事態が起こるということです。

 現代は、特に少数派の意見でもSNSで情報が拡散されることで大衆の総意を見誤り、本来望んでいない対立や分断が生じてしまうこともあり、事実ロシアによる情報の拡散はアメリカの大統領選挙にも影響を及ぼす事態となっています。

 では、これにどのように対応すればよいか。

 著書によれば、複数のアイデンティティをもつことでリスク回避ができるのではないか、できるだけ多様な組織に属して自分の中にポートフォリオを作ることで一つのアイデンティティに支配されることがなくなるということです。

 また沈黙することは、その意見に同調していることであり、他の人にも同調バイアスを作り出すため有害となる。自分の真意と異なるならば、少しでも意見を述べることで、それまで顕在化していなかった本当の真意が表に出てくる流れとなることもあり、小さくてもきっかけになることがあるとのことでした。

 人は、集団の皆がそうしていると自分の知らない何か理由があるに違いないと思い、模倣してやり過ごすことも多いのですが、実際は他人も単に模倣をしているだけで、疑問を感じていることも少なくないという集団心理の幻想に、早く気が付いて改善しなければならないと思います。

水野健司特許法律事務所|技術・知的財産、外国企業との契約書を中心に解決 (patent-law.jp)