コロナ禍でのマスク着用の業務命令は有効か

 新型コロナウイルス感染症も落ち着きを取り戻しつつありますが、コロナ禍で出されたマスク着用の業務命令の有効性が裁判で問題になりました。

 大阪地裁令和4年12月5日判決ウエストロー2022WLJPCA12056001では、マンション管理業務を行う会社が従業員にマスク着用の業務命令を出しましたが、これに従わない従業員を懲戒事由として普通解雇しました。

 裁判所は、マスク着用は感染防止やマンション居住者に対する安心感を与えるという効果があり、マスク着用の業務命令自体は有効であり、その従業員は業務命令違反があるとしました。

 もっとも会社は、マスクを着用していないことに対して注意や指導をすることなく解雇としたため、社会的に相当な処分ではなく、その普通解雇は解雇権を濫用したものとして無効としました。

 この事案では通勤費について不正に受け取った事実もありましたが、これは引越しにともなって差額が発生したものであることや総額が3円弱であること、直ちに返還する意思を示していることなどからこれを合わせて考えても普通解雇は無効であるとしました。

 一般的に解雇は、最も重い処分となることから注意、減給等段階を踏む必要があり、それでも改善されない場合の最後の手段であるということを再確認した事例です。

 

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