「価値」こそがすべて!~ハーバード・ビジネス・スクール教授の戦略講義

 商品やサービスに付加価値を与えて利益率を上げようとする戦略は今の中小企業にとって最も重要な課題となっています。そのためにいかにして高い価値を創造すべきかという問いに筆者はシンプルに答えを出しています。

 それは顧客がその商品に支払う最高額(WTP)をできるかぎり上げて、その商品を売るために従業員やサプライヤーに支払わなければならない最低額(WTS)をできる限り低くすることにあるとしています。

 成功期のアップルは高額であっても顧客に歓喜を与えつつ、そこで働く従業員は満足しておりショッピングモールはアップルストアが存在することで来客する顧客が増価することでサプライヤーにも高い価値があったとしています。

 また企業はさまざまな打ち手(イニシアティブ)をとっていることが多いが、顧客歓喜を挙げようとすることと従業員満足を挙げることとが相互に矛盾することも多く一貫していないことが多いことも指摘されています。

 規模の経済やネットワークは大企業に有利なようでもありますが、著書では弱者の戦略として中小企業であっても大企業と市場をすみ分けることによって共存できる例を示しています。

 例えばアマゾンは一般顧客を相手にマーケットプレイスを提供していましたが、ハンドメイドの作り手側に注目してオンライン市場を作った会社が独自の市場で成功していると紹介されています。

 また子供や成人の障害者向けに着脱が容易な衣服を提供しているアパレルメーカーでは障害者の顧客歓喜を獲得すると同時に社内に障害者市場にかかわりたいという従業員も多くいて、WTPを高めつつWTSを低くするという2つの価値創造に成功したということでした。

 ある戦略を実行するうえでそれがWTPとWTSにどのような影響を与えるのか、ということを観察し分析することが大切であり、戦略をシンプルにとらえることができるようになると感じます。

水野健司特許法律事務所|技術・知的財産、外国企業との契約書を中心に解決 (patent-law.jp)