「失敗の科学」(マシュー・サイド)

 航空業界ではかつて数多くの事故が起きていたが、ブラックボックスの分析と改善で驚くべき進歩を見せてきました。これに対し、例えば医療における手術事故ではミスをミスと認めない権威主位的な態度をとる医師が絶対的な存在で、真実が明るみになることはほとんどなく、未だにミスで命を落とす事例が多数あるとされています。

 医師が現実に起きた事実を受け止めようとせず、自分には何ら攻められるべきことはないと説明するのは、医療裁判でもよく見られる対応です。

 また、例えば企業における組織文化として、重大な問題が起きたときに、責任者を非難する傾向が強い会社ではミスを隠すようになり、改善する機会がなくなってしまうとされています。失敗を有益な機会ととらえ分析して、そこから学習しようとする環境を作ることが管理者には求められるとされています。

 無知とは知識の欠乏ではなく、学習に対する拒絶であるという言葉に現れているように、失敗を前向きにとらえ、分析して粘り強く継続することの大切さが理解できます。

 本書では日本におけるイノベーションが、企業に対して失敗することの恐怖心が高いことによると分析しています。日本では、事業で失敗することに対するイメージが悪く失敗したくないという考え方が強すぎるため、起業に対する意欲も低いと、言うことができるということであり、これはそのとおりだと思います。

 失敗に対して責任を追及するのではなく、原因を分析して学習する機会につなげるよう心掛けたいものです。

 

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