AIにとって代わられる職業とそうでない職業

 「AI 2041 人工知能が変える20年後の未来 (未来8)」(カイフー・リー著)を読ませていただき今後30年間でAIにとって代わる、つまり消滅する職業は何か、を改めて考えさせられました。

 著書によると、AIが不得意な事項は3つあり、これらに関わる職業は20年程度ではなくならないであろうとされています。

 第1に創造性です。著者によれば、創造、概念化、戦略策定だということです。

 AIは、大量データを所定の目標から最適解を導くということは圧倒的な優位性を持ちますが、他の分野から連想、類推したり、上位概念に抽象化したりすること、常識や異分野の知識を適用することはできません。

 一般に誤解が多いと私が思うのは、大量データを知識として体系化する作業は深層学習という技術があるため、人間は到底AIにかないません。

 これは、人が電車や自動車と競争しても絶対に勝てないというのに似ています。それくらい圧倒的な差があるということを認識しなければならないでしょう。

 しかし、電車や自動車が人間の代わりになるなどという人はいないでしょう。

 つまり、AIは極めて狭い分野で特定の目的の下でしか機能しないということです。

 自由かつ柔軟な思想から想像したり、他の分野からヒントを得て類推したり連想したり、戦略的に様々な要素を組み立てたりする作業はAIにはできないということであり、自らの職業がこのような要素をどれだけ持っているかを考える必要があるでしょう。

 第2に共感です。人間に対して共感、同情したり、尊重し大切にしているとの感情をもつこと、人に共感されている、大切にされているとの印象を与えることはAIにはできないとされています。

 ただし、子どもはアニメなどに没入しやすいようにAIに共感したりすることは大人よりは起こりやすいといえます。

 結局のところ、AIといっても大量のデータを基に最適解を出しているだけであると考えれば、人間的なつながりをもつのは難しいでしょう。、

 逆にいえば、人間的な温かさを商品・サービスの中核に置いている職業はAIにとって代わられるということはないと考えてよいでしょう。

 第3に手先の器用さを必要とするものです。

 AIを搭載したロボット技術は進化しているものの人間が行う手先の微妙な動きは実用化には遠いということです。

 例えば、介護で高齢者を支えながら入浴させるという例があげられています。

 もちろんPCやスマホのように大量生産、大量消費が予定されていれば、これに対応して精密技術が開発されるでしょうが、個々の手先の器用さが必要とされる職業がAIにとって代わられるということはないということです。

 以上みてきてわかるのは、やはり技術自体をよく理解することが今後の自らの職業、職域、事業分野を決める上で重要になってくるということがいえると思います。

 

水野健司特許法律事務所

弁護士 水野健司

水野健司特許法律事務所|技術・知的財産、外国企業との契約書を中心に解決 (patent-law.jp)