「イーロン・マスク「親露」の虚実」(選択2024年10月号)

 イーロン・マスク氏が米大統領選でドナルド・トランプ氏を支持していることは知られていますが、それにはロシアの影が見て取れるとするものです。

 マスク氏がツイッターを買収する投資家には欧州が制裁を科している組織のロシア人が入っていること、トランプ氏の議会襲撃事件で凍結していた旧ツイッターのアカウントを復活させたこと、マスク氏自身がクレムリンの諜報担当やプーチン氏本人とコンタクトをとっているとされていること、そしてウクライナ戦争に対するXの情報操作もあげられています。

 例えば、キーウの小児病院がミサイル攻撃を受けたときウクライナの地対空ミサイルが落ちたというロシア側の意見を支持し、ウクライナでダムが破壊されたときはこれを自作自演だとする動画を拡散したほかウクライナの地元の人々がXを使って情報交換しようとしたのを妨害したとされています。また衛星を使ったスターリングの使用をウクライナの軍が使用するのを遮断した一方でロシア軍がこれを使っていることが確認されているとされています。

 米司法省もロシアの介入については警戒しているということですが2016年と同じ轍を踏むのではないかという見方があります。

 Xという公共性の高いメディアがマスク氏という民主的な基盤をもたない個人が握っていることの危うさが見て取れます。ただここまで明確に親ロシア、親トランプ氏がはっきりとしているのであればそれの立場を前提にXというメディアに接していくことでリスクはある程度回避できるのかもしれません。

 この現代社会では厳密な意味での政治的中立性はありえず常に何らかのバイアスがかかっていることを認識して各メディアに接することが必要なのでしょう。

 ソビエト崩壊でアメリカに対抗できなくなったとされるロシアが最も得意とする諜報活動で米国のメディア、技術、財産で巨大な力をもつマスク氏と政治の頂点である大統領になろうとするトランプ氏の2人を自らの陣営に取り込もうとしていること、それを成功させようとしていることに驚かされます。

 

水野健司特許法律事務所

弁護士 水野健司

水野健司特許法律事務所|技術・知的財産、外国企業との契約書を中心に解決 (patent-law.jp)