『電気自動車「中国EV失速」その実態に迫る』、「東南アジア 日本車王国タイを日本が失う意味」(Newsweek日本版 2024年7月9日号)

 タイトルでは失速とされていますが、それは日欧米の自動車大手では中国の圧倒的な価格競争力に太刀打ちできず、中国のEV(プラグインハイブリッド車PHEVも含めて)は今後世界を席巻するだろうと思います。

 中国は、大気汚染の問題などから国家の政策として電気化を推進しており、レアメタルが入手できること、部品製造に十分な技術や経験を備えていることから安価で高性能なEVを開発する能力を備えており、実際に中国自動車メーカーBYDのPHEVは補助金を使えばトヨタカローラよりも3割以上安く手に入れることができるということで価格破壊が起きているということです。そして、中国国内では競争が激化しているため、中国EVメーカーは海外市場に生き残りをかけているということです。

 これに対して、欧米では高い関税で対抗されてしまっているため、タイやメキシコ、ブラジルなどへの輸出を拡大しようとしているということです。

 そして、タイではすでに中国のEVをよく見かけるようになってきており、タイ政府は中国の安価なEVに大きくシフトしつつあるということです。日本車メーカーとの関係が密接だったタイは、全方位戦略をとる日本メーカーとのパートナーシップを解消する可能性が高くなっているということです。

 同様のことは、インドネシアでも起きており、日本は東南アジアの市場を失う可能性が高くなっており、これはメキシコ、ブラジルでも同じことがいえそうです。

 EVシフトが鈍化しているのは、欧米で高い関税を設けたことやある程度需要が一巡したということにすぎず、圧倒的な価格と性能を備えた中国EVが日本の自動車メーカーにとって脅威となるのは確実だと考えられます。

 かつて日本の電化製品や自動車が、欧米市場から高い関税をかけられたのと同様に高品質で価格競争力の高い中国車がいずれ世界で大きな市場を獲得することは覚悟しなければならないでしょう。

 

 

水野健司特許法律事務所

弁護士 水野健司

水野健司特許法律事務所|技術・知的財産、外国企業との契約書を中心に解決 (patent-law.jp)