「人々が欲しいのは1/4インチ・ドリルではない。彼らは1/4インチの穴が欲しいのだ。」というセオドア・レビット氏の名言がありますが、企業は商品を売り出すとなぜか1/4インチの穴ではなく1/4インチのドリルを売ろうとしてしまうとされています。商品を開発している段階では顧客が解決すべきジョブは何か、に注目していたはずなのに、商品が発売されて時間がたつと、商品に目が行ってしまい、商品のラインナップを増やしたりすることがあります。例えば、生野菜を摂るというジョブを解決するために野菜ジュースを発売しながら、発売後時間がたつと野菜ジュースのフレーバーを増やして小手先の売り上げ増加を試みたりするということです。
その原因として、商品が実際に販売されだすと明確で客観的に見えるデータが集まりだしこれらにどうしても注目してしまう。商品の明確なデータに注目すればするほど商品の売り上げを上げるために商品の種類を増やしたり他の企業を合併したりして顧客が解決すべきジョブから離れてしまうといいます。
これはデータ(数値)というものが解決すべききジョブという定性的であいまいなものよりも、はるかに客観的で明確なものであるかのように錯覚してしまうことが原因であるとされています。
著者はすべてのデータはそれを採用した人のバイアスが入っていることに注意すべきだとしています。
現在はアマゾンのリコメンドに見られるようにすべてがビッグデータで処理されているかのような印象を受けますが、データはどの場面でどのようにとるかによって顧客が示す一部でしかなく、ほとんどの情報は定性的であいまいな部分が残っていることを改めて確認することができました。
水野健司特許法律事務所
弁護士 水野健司
水野健司特許法律事務所|技術・知的財産、外国企業との契約書を中心に解決 (patent-law.jp)